2014年11月11日火曜日

TW3 【偽シナリオ】 ハロウィンに一工夫を

山々が赤や黄色に染まり、秋もすっかり深まったハロウィンも近い
ある日のこと。
夕闇迫る頃に、グリッター村のとある一軒家で小さな騒ぎが起きていた。
村の子供たちが帰って来ないのだと親達が相談に来たのだ。
子供たちは近まるハロウィンのために、何か工夫を思いついたらしく、
連れ立って山に出かけたのだという。

心配する彼らの話を聞き、子供たちを家で待つようなだめ、
彼らを見送ったクィは、扉を閉めると君たちに向き直る。
棚から村の周辺地図を広げると右上の手前の山を示す。

「村の子供たちは、この山に向かったそうなの。
子供たちは全部で3人。
ハロウィンの準備で、何かを取りに行ったのだそうです。
山で、何かあったのかもしれませんね。
一応、自警団の2チームにも捜索を頼むのだけれど、
私は今夜はここから離れるわけにいかないから、
よかったらみんなにも手伝ってもらえるとありがたいの。
それと、暗いから、みんなも足元に気をつけて、ね」

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参加者
藍の剣鈴・レナス(c20602) 
赤い瞳の・ティ(c01976)
掲載許可をとりました。ありがとうございます。
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     <リプレイ>


 急遽の呼びかけに応じることができたのは、藍の剣鈴・レナス(c20602)と赤い瞳の・ティ(c01976)、二人のエンドブレイカーだった。
 二人は村の自警団のチームと共に子供たちの向かった山へと急ぐ。
「急いで子供達を捜さないと。怖さと寒さできっと泣いているに違いない」
 秋の日はつるべ落としとは言うが、村を出てそう経たないのに辺りはすっかり暗くなってしまっていた。

 隊を二つに分けるというレナスの提案にティは頷き、レッドスターの面々と共に山に分け入る。
 20mほど間をあけて、横一列に並ぶ団員達。平面で捜索しようという作戦だ。
松明を掲げて笛を鳴らし、大きな声で子供たちに呼びかけつつ道なき道を上っていく。

 敵も気がかりですが……
「まずは子供たちを探します」
 一瞬の逡巡の後にきっぱりと言い切ると、レナスはブルースターを率いて山道を上っていくことにした。
「フィアンナ、子供たちを捜して。この山のどこかにある小さな洞穴に隠れているはずだから」
 そう言うと、レナスの肩に止まっていた小さな妖精、フィアンナは目で頷くと燐光を残して飛び立っていった。
「さぁ、私たちも急ぎましょう」


 道沿いに歩きながら捜索するレナスとブルースター。明りを掲げ、子供たちを呼ぶ。
 応える声があればいいのだけれども……
 行く道は暗く、上るほどに道は狭くなっていく。

 そんな折、フィアンナが舞い戻って来て何事か耳に口寄せて告げる。すぐ近くに敵がいるというのだ。
 場所は……、と見た右の藪から何ものか勢いよく飛び出してきた。見ればブランが巻き込まれて弾き飛ばされているではないか。明りを掲げると、そこには2mはあろうかという大イノシシ。
 鼻息も荒く、自慢の牙が鈍く煌いて刺し貫かんと構えるのを見て取ると、レナスは魔力を秘めた翼の羽を無数の光の剣に変え、瞬時に撃ち出す。
「ここは私が。ブルースターの面々は持てる攻撃をコウモリへ集中してください。様子を見て剣翼翔で援護致します」
 ここに敵がいるということは、この近くに子供たちがいるのでしょうか。レナスは湖面庭園 【睡蓮堂】団長を思いつつ、浄炎剣を握り直すのだった。

 木々の間からは、闇に紛れたコウモリが不気味な羽音を立ててブルースターの面々へ次々と襲いかかってくる。
 血を吸い上げようと群がってかじりついてくるコウモリに、あるものはガンナイフで振り払い、あるものは大剣を盾にせんと防御を固めている。
 走りこんで斧を振り上げ、エリックに集る鎧コウモリの胴に一撃食らわせるのは、にっと口角を上げるブランだ。
「前線は任せてください、これしきの傷」

「フィアンナ、いきますよ!」
 呼べば妖精がレナスの身体に、すぅっと溶け込むとレナスの背から妖精の翅が現われる。風を掴み、力強く羽ばたくとその勢いのままに攻勢をかけていく。
 乱れ舞うような予想できない剣戟の嵐に、どぅと倒れた大イノシシの巨体は静かに地を濡らしていった。


 一方、地道に子供たちの捜索を続けるティとレッドスターの面々は、少しずつ疲労が蓄積していた。
「おーい、助けに来たぞ~。どこにいるんだ~い」
 そんなに高くない山とはいえ山一つ、探す範囲は広く、本当に広く感じられる。笛の音や、大きな音はタイミングを合わせる工夫はしたものの、子供たちから返事が返ってくるだろうか。いや、そうでなくても探し出さねばならないのだと自分に言い聞かせ、夜の山にまた声を揃え上げていく。

 何度それが続いただろうか。次の声を上げようとした時に、かすかに声が聞こえたのだ。
 しっ…、じっと長い耳を立て、あっちだ!声のする方にグランスティードで駆ける。明りを掲げ、慌ててついて行くレッドスター。近づくほどに、剣戟や争いの音が聞こえる。レナスたちが戦っているに違いない。

 小さな洞窟の程近くでそれは起こっていた。見上げれば洞窟の入り口から子供たちが顔をこわごわと覗かせているではないか。ティはグランスティードを駆り一足飛びに子供たちのもとへ。
「わたしが来たからには、もう安心だ。レッドスターは子供たちを頼む」

 不意にバサッとその場を影が覆う。キキッ。鎧コウモリが翼を広げて男の子に襲いかかろうとしたところを真っ白い翼を広げて庇うティ。かじりつきからの強烈な吸血に額から血を流しつつも、にこっと笑顔を見せる。
「大丈夫だ、これくらい、なんてないぞ」
 お返しとばかりに翼を氷へと変え一刺し。強烈な冷気を注ぎ込むと鎧コウモリはたちまちの内に分厚い氷の中に閉じ込められ、ゴトリ、と足元へ落ちた。


 レッドスターが子供たちのもとへ辿り着くのを見届けるとすぐさま踵を返して助力に向かう。
「レナス、こうもりは私が打ち落とす。大物の方を、頼む!」
「いつも通りたたきつぶしましたわ。問題は…」
 胸元のEwigkeit *Zukunftが煌くレナスの見遣る先には苦戦するブルースター。

 二人は頷き合い、共に背の翼を大きく広げる。
「「閃煌剣翼翔!」」
 無数の光の剣に姿を変えた羽が辺り一帯を覆い、石の鎧のような皮膚を次々と刺し貫いていく。
 広げた翼も裂かれては空を飛ぶこともできないコウモリは地に落ち、後には再び、夜の静寂が訪れた。

 子供たちと合流後、レナスは「楽園の門」を開き、仲間の傷を優しく癒す。ティは子供たちをグランスティードに順番に乗せているようだ。
 そして子供たちのお目当ての蔦は、どうやらこの洞窟の外の岩壁にあったようで、フィアンナにも手伝ってもらってあれやこれやと一騒動して無事に手に入れることができ、子供たちも満足そう。

 レナスの傍らにいる小さな妖精に女の子も興味深々に見たりなんかするので、レナスはフィアンナとはアイコンタクト一つで意思疎通ができる頼れる相棒よ、と説明したりしながら村への帰路を護衛するのだった。
 無事に下山して村に着く頃には白々と夜が明けていて、それでもまだ明々と明りを灯した一軒家から走ってくる影があるのを二人は認めるのだった。

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