2014年11月11日火曜日

TW3 偽イベントシナリオ≪湖面庭園 【睡蓮堂】≫『素人パスタ大会』 オープニング&リプレイ

クィ、とっても楽しみなんだよう★(きゃいきゃい

みんなでパスタを作って、その味を競いあうお祭りなんだって♪

だから、えっと……、クィと一緒に『素人パスタ大会』に行ってくれる方、いるかな?(そわそわ
 
----------
 
●ネコ耳のカチューシャと守られた平和

「は!」
そのことに気づいて全身の血の気が引く思いにかられたのは、やっぱりどじっこ皇女編・ヴァゼル(c13187)だった。
今日は『素人パスタ大会』。
えー本日はお日柄も良くー……と町長が挨拶をしている最中のことだった。

(「ふふふ、今日は美味しいパスタを作るコツを、盗んで帰りますよー」)
メモ帳片手にニヤリと笑むのは紅嵐焔姫・ナナセ(c07962)だ。
(「それもこれも大好きなあの人のた・め……♪」)

そんなナナセを見つけたのか、駆け寄ってきたのは手の中の小さな温もり・クィ(c03420)だった。
「ナナセさん、こんにちは、なんだよう。ナナセさんも、もしかして素人パスタ大会に出場するのかな?」
期待感にそわそわを隠せないクィ。
「残念ながら、今日はのんびりまったり会場を見て回りつつ、参加される皆さんの料理の邪魔にならない程度に、美味しいパスタを作るコツを伝授してもらいに来たっすよ」
「そっかぁ、……あ、でも、パスタ料理の秘密、いっぱい見つけられるといいよね♪」
クィはこっくりと笑顔で頷いた。

「はいみんな差し入れですよ。あと良かったらつけてください」
のんびりした話し方、しかし愛嬌を振りまくのも忘れない雪割りの花・カレン(c03490)は、自分の畑で作った新鮮な採れ立てのトマトと、ネコ耳のカチューシャをみんなに配って行く。
「これでみんなおそろいですよー。クィさんも、おひとつどうぞ」
「カレンさん、ありがとうございます、なんだよう。早速、つけてみるね♪」
よいしょ、っとネコ耳のカチューシャを被ってみるクィ。何となく、そわそわしている様子に。
「楽しい日になりますように、です♪」
カレンはウインクを投げて応えた。

「わ~いわ~いパスタだパスタだ、っていうかヨツハの手料理だ。何気に手料理食べるの初めてなんですよね!いやぁテンションが上がる上がる!」
一方、新婚ほやほや特有の、ばカップル振りを大いに発揮するのは、デウスエクスマキナ・ベルンハイト(c18697)だ。
このイベントで彼の愛妻が手料理を張り切って振舞ってくれるということで、普段の3割増しでハイテンション!になっているに違いない。
世の中には、ばカップルに免疫が無い人もいるのだろう、ベルンハイトが振りまく愛のヨツハコールに驚いて振り返る一般人も幾人か。
「あ、そこウザいとか言わないでください。愛しの人の手料理と聞いてテンションが上がらね~とか男じゃないですよ、いやマジで」
ここぞとばかりに熱く語る男、ベルンハイトだった。
そんなベルンハイトを見つけたクィが駆け寄って行く。
「あ、ベルンハイトさんが来られているってことは、ヨツハさんも一緒なんだよね♪ヨツハさん、今日はどんなパスタを作られるのかな。ベルンハイトさん、知ってる?」
小首を傾げて尋ねるクィに。
「どんな料理が来るかは知りませんがそれゆえに!どんなものが出来るのか楽しみにしつつヨツハを応援いたしましょう!」
更に盛り上がったベルンハイトは、愛妻を応援することに決めたようだった。
「ヨツハさんの手料理、楽しみだよね♪」
お揃いのネコ耳のカチューシャで、にっこり微笑み合った2人だった。

●パスタ料理戦線~それぞれの戦場にて~

◆パスタ料理作成~ヨツハ編~
「ベルのために最高のパスタ作るよっ♪」
カレンから分けてもらった完熟トマト片手に気合充分なのは、桜色の幸せ四葉・ヨツハ(c15542)だ。
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、大さじ1杯の塩を入れ、そのぐらぐら湧いている鍋に、計量したパスタを華の様に投入する。
「これでよしっと。さて、その間に……♪」
別の鍋に沸かしていたお湯にトマトを潜らせ。
(「そろそろかな?」)
今度は氷水で冷やすと……一皮剥けた、いいトマトがつるんと顔を出す。
全てはそう、“愛するベルンハイトのために……”。

パスタが茹で上がるまで、もう少し。あとは時間との勝負。
ヨツハは湯剥きしたトマト,チーズを1cm角に刻んでいく。
薬味にはにんにくをすりおろし、青紫蘇は千切りに。
茹で上がったパスタをザルにあけ、さっと冷水で荒熱を取り、しっかり水を切るとパスタをボウルに入れる。
先ほど切ったトマトとチーズ、すりおろしたにんにくにオリーブオイルを絡め、和えていく。
塩コショウで味を整えて、皿に盛り付けて青紫蘇を散せばもう、【簡単ひんやり冷製パスタ ヨツハスペシャル】の完成だ。

夫のためにと一生懸命作っているヨツハを遠巻きに見ているナナセ。
(「これは……まさしく愛っすね!」)

◆パスタ料理作成~カレン編~
「こうみえてもカレンは自由農夫なんですよ」
といってパスタ料理作成にエントリーしたのはカレンだった。
今回カレンが作るのは、オーソドックスなミートソーススパゲッティ。
しかし侮る無かれ。作り方はシンプルだが素材で勝負、というわけだ。
趣味の植物好きが高じたとはいえ、蒼炎騎士団の詰め所に行けば、可憐な草花が咲き乱れる光景が見られるだろう。
そのご自慢の自分の畑で作った新鮮な採れ立てのトマトを、惜しげもなく使ったミートソースは、最早、絶品と言ってもいいのではなかろうか。

「カーレーンーさんっ♪ナナセっす。こう、美味しく作るコツとかあるんすか?」
ひょこっと顔を出したナナセにカレンは、トマトへの想いを熱く語ったという……。

◆パスタ料理作成~ヴァゼル編~
「…残念ながら【紫色の斬新パスタ】は用意できません!」
泣く泣く、まかない料理のパスタを作るヴァゼルの胸の内を知るものは、いかばかりか。
その結果として、この大会を楽しみにしていた多くの人が犠牲者にならずに済んだ事は、言うまでも無い。

「でも、参加はするんだよね?ヴァゼルさんは、何を作るの……?」
クィは小首を傾げて尋ねる。
「料理するのはこれです」
【海鮮すばやくパスタ】と書かれたメモをさっと取り出して、意気揚々と説明をするヴァゼル。
おでこに貼られた5枚重ねのどじっこシールアルファと、ネコ耳のカチューシャが醸し出す雰囲気とのギャップに、思わず笑みがこぼれてしまうクィだった。

「…っていいでしょうか?」
「実際どじっこと言いながら…どじするとへこむ心はあるわけで」
ずれた眼鏡を直したところで、ヴァゼルは調理に入る事に決めたようだ。
「はーい。じゃぁ、後でまた、ね。クィも作らなくっちゃ、だからね♪」

使うのはもちろん、今朝採れ立ての新鮮な魚介類。
まだ跳ねる海老の殻を剥き、アサリと共にすばやく茹で、茹で立てのパスタに混ぜ込んでいく。
その際にライムを二個絞って掛ける事は忘れない。
そこにバジルの千切りをかけて。
「ついで焼き海苔も千切りしてかけて……っと……完成です」
彩りも鮮やかな【海鮮すばやくパスタ】は、一口食べれば、程よい酸味が清涼感をもたらしてくれるだろう。

◆パスタ料理作成~チャイ編~
My調理器具や材料の入った大きな袋を担いで会場入りをするのは、花咲く笑顔の・チャイ(c10051)だ。
彼のいつもの服装にシンプルなエプロンをつけ、髪が料理に入らないようバンダナを頭に巻いて、準備完了。
エントリーして持ち場に着いたらパシパシと頬を叩いて気合いを入れるチャイ。
「…よ~し、がんばるぞ~っ」
今日は【冷製デザートパスタ】作りに挑戦だ。
茹でた後、冷やしたフジッリ(螺旋状パスタ)の上に、フローズンヨーグルトと甘いブルーベリーソースを添えていく。

「ボクはコテコテに甘いのが好きだけど、今日は勝負に出るから甘さ控えめでね」
「ほうほう……味付けはシンプルに……っすね」
メモを取ったナナセは、チャイにお礼を言う。
チャイは、次の戦場へ赴くナナセを笑顔で見送った。

そう、味付けは極めてシンプルに仕上げた。
素材そのものの味を最大限に生かすために。
(「ふぅ……、こっちも作り終わったし、みんなの料理を試食しに行っちゃおうかな」)

◆パスタ料理作成~シェミア編~
白いフリルエプロンをつけた少女は守護獣の背を護りし刈り手・シェミア(c19503)だ。
「ペペロンチーノ作るよ……」
短く呟くその言葉の中に、彼女の自信が見え隠れする。
ペペロンチーノといえば、唐辛子とニンニクが使われる、辛いスパゲッティ料理の代表格だ。
シンプルな中にも旨みと辛味、そのどちらもがバランス良く絡み合ったペペロンチーノは、賞賛される。

「始めるね……」
そう言うとシェミアは、まず、赤唐辛子を取り出した。
シェミアが務めている辛味亭ジェーンで使われているものだ。
辛味亭ジェーンといえば、『辛党の辛党による辛党の為の旅団!』と銘打っていることもあり、エンドブレイカーの中では知る人ぞ知る食事処なのである。
その辛味亭で実際に使われているという、契約農家から拘った厳選香辛料。……聞く程に辛そうではある。

トントントン……、赤唐辛子とニンニクを刻む音が小気味好い。
フライパンを火に掛け、オリーブオイルを手早く引くと、先ほど刻んだ紅白を放り込む。
ジャッジャッ……、軽く混ぜ合わせ、じっくりと火を通すことで特有の香気を引き出していく。
シェミアはそれと平行して、大きな鍋にたっぷりの水と多めに塩をいれてお湯を沸かす。

「お?オリーブオイルが、ほんのりオレンジ色になってきたっすね」
「ペペロンチーノは辛さが命だからね……。この油自体にもう、この唐辛子の辛さが移っているんだよ……」
「へー、そうなんっすかー」
「ちょっと、舐めてみる……?」
「へ……!?」
どうしようかなー、と迷っているナナセ。
無理はしなくてもいいよ、とシェミアは、そう、ほんの少しだけ目を細めた。

「さて、仕上げにはいらないと……」
「仕上げ……?」
1つ頷くことで肯定してみせたシェミアはとても楽しそうだった。
少なくとも、ナナセにはそう思えた。

「そう、色がついてきたら炒めるのを止めて、お湯が沸騰したらパスタを茹でるね……」
「茹で終われば、香草を刻んでさっと炒めて、全部混ぜ込めば、完成だよ……!」
(「料理すること自体を楽しむことが大事なんっすね」)
ナナセは、料理人としてのシェミアの姿を垣間見たに相違ないのだ。

「香草のさわやかさと、トウガラシのピリ辛具合がいい感じにおいしくなってると思う……」
味もだけど、香りも楽しんで欲しい、とシェミアは告げた。

◆パスタ料理作成~レベッカ編~
「あたしもエントリーするっすよ」
手を挙げ、我こそはと名乗り上げるのは、宿命の迷子・レベッカ(c04194)だった。
「凝ったものは作らないっつーか、作れないっす」
そう、きっぱりと明言するレベッカは、手馴れた手付きでカレンのトマトを刻んでいく。
2つの鍋に火が掛けられた。

その片方の鍋では、刻んだトマトを収めてコトコトととろ火で煮込む。
実は、塩を少し加えることで、トマトの甘みが引き立つのだ。

もう片方の鍋には水が張ってあり、沸騰したところに一口大に切ったイカを投入。
実はこのイカ、ちょっとした工夫が施してあったりする。
「イカが、ぱっと花開くっす」
「イカが花開くっすか?」
興味をそそられたのか、鍋を覗き込むナナセ。
「まぁ、見てれば分かるっすよ♪」

さっと一茹ですると、お湯の中でイカが踊り、その身を反らせて、まるで何かの細工物のようにも見える。
「これは、どういう……?」
「イカに格子状の切れ目を薄く入れたっすよ。
ちょっと器用さが必要っすけど、これをしておくと、イカにソースの味が絡まりやすくなるっすよ。それに、見た目の仕上がりも華やかになるっすよ♪」
鍋からイカをすくって水気を切ると、レベッカはそれを、細切りにしたミョウガと一緒に、フライパンで炒めていった。

大きめのフライパンに油を引いて、サイコロ状に切ったナスと、ざく切りにした小松菜を投入。塩胡椒でがっつり味付ける。
「これがレベッカ風っす」

新しくなみなみと水を張った鍋を火に掛け、沸騰するとスパゲッティを投入。
「さて、パスタを茹でている間に、もうひと仕事っすよ?」
煮込んでいた鍋のトマトを先ほどのフライパンに流し込み、よく混ぜ合わせる。
そして、ゆで上がる少し前にスパゲッティを引き上げる。
フライパンの中の具とよく混ぜ合わせ、皿に盛り付ければレベッカ特製スパゲッティの完成だ。

「うまくてもまずくてもご愛敬ってね」
時折見せるウインクの愛嬌は、勝負よりも何よりも、この場の雰囲気をいちばん楽しんでいるのがレベッカだということを、何よりも証明するものなのではないだろうか。

◆パスタ料理作成~クィ編~
ネコ耳のカチューシャを被ったクィを笑顔で迎えてくれたのは、チャイのお母さんである花咲く仕立て屋さん・アーネチカ(c23166)だ。
いつもは下ろしている長い赤茶の髪も、今日はアップで一つにまとめている。
フリルなエプロンと三角巾でバッチリ武装して、臨戦態勢は整ったって感じ☆

「おかえりなさい、クィちゃん。今日も元気にいきましょ~」
「はーい、なんだよう♪」
アーネチカがクィの為にと作ってくれた、子供用の小さな花柄のエプロンをつけて手を洗い、よいしょっと踏み台にのぼるクィ。
台の上にはパプリカやさやえんどう,エリンギと鶏もも肉などが置かれている。
「アーネチカさん、あの……、おいしそうに見える野菜の切り方は、どう切るの?」
「それはね……♪」
包丁を片手に持余す様子に、アーネチカがそっと後ろから抱っこするように。クィの手に、その手を添えて一緒に切っていく。
端から見れば、きっと仲の良い親子に見えることだろう。
「お野菜の大きさを揃えて…そうそう、上手よ~。クィちゃん偉いわ~」
「アーネチカさんに教えて頂けたから、なんだよう……♪」

材料をあらかた切り終わったところで、アーネチカは、こう切り出した。
「じゃぁ、後はクィちゃん1人でやってみようかな?」
アーネチカには、考えがあった。
(「何でも手助けするのは、助ける事とは違うの。でも、きっとクィちゃんなら出来るから」)
それを知ってか知らずか、クィは元気いっぱいに微笑む。
「うん。クィ、がんばっちゃうんだよう」

オリーブオイルを引いたフライパンに火をかけたところで、薄くスライスしたニンニクを入れていく。
程よい焼き目がついたところで鶏もも肉をじっくり焼いていく……。

途中、何度かハラハラする場面はあったものの、なんとか完成に辿り着いた事で、アーネチカは胸を撫で下ろすのだった。

●パスタの宴とその後に

「パスタですか~。いいですね~たまには」
みんなが作り終わった頃にふらりとやって来て、ひょいと顔を出したのは紅月の舞人・サザ(c06931)だ。
3度の飯に豆腐を食べても飽きる事が無いほど、こよなく豆腐を愛している彼は、流石に普段からは、パスタを食べる機会が少ないらしい。
遅れた手土産に~と、差し出したのは『おとうふプリン』。
「今日は暑いですからね。それに、ねぎらいの意味も込めて、黒蜜をかけてどうぞ」
エントリーした参加者にお手製スイーツを配っていく。

野外に設けられたいくつもの丸テーブルには、出品されたパスタ料理が所狭しと並べられている。
エントリーした人も、そうでない人も、好きなパスタを好きなだけ試食する事が出来るのだ。
会場の一角に、楠が枝を広げて木陰を落としている。
【睡蓮堂】に出入りしている面々は、その一角に陣取って、思いおもいに試食する事に決めたようだった。
(「みんなのも、おいしそうだなぁ……」)
並ぶ料理に、シェミアのお腹もくぅと鳴る。そんなシェミアにクィは、一緒に食べよう、とその手を取った。

「ヨツハさんのパスタ料理は冷製なのですか、夏にちょうどいいですね。あ、これ、つまらないものですけど、よかったらどうぞ」
そう言ってベルンハイトにもお手製のスイーツを差し出すサザ。試食をするべく、ちゃっかりとテーブルに同席している。

ベルンハイトは、【簡単ひんやり冷製パスタ ヨツハスペシャル】が出来るのが、今か今かと待ち遠しいのだろう。
「ヨツハが作るならなんでも美味ですよ!少なくとも私にとっては!Loveいずオーケーなわけでございます」
と、食べる前からこんな勢いだ。

「わたしも、みんなの料理もいっぱい味見しちゃいます♪」
遅れて来たサザに、愛らしいネコ耳のカチューシャをさり気なく渡すカレン。
それを受け取ると、サザはしっかり装着するのだった。

そこでヨツハの登場だ。
「ベル、お待たせ♪頑張って作ってみたけど、こんな感じでどうかな?」
待ってましたとばかりにパクつくベルンハイト。
「もちろん美味しいに決まってるよ。なにせヨツハの愛が詰まった料理だからね」
「だからヨツハも一緒に食べましょう!」
いつに無く有頂天な夫の様子にヨツハは心の中で呟いた。
(「ベル、わたし、今すごく…幸せだよ♪」)

甘く甘い二人だけの世界を肌でひしひしと感じるのはナナセだ。
(「自分も今晩はきっと……」)
愛する夫の喜ぶ顔を思い浮かべてぐぐっと拳を握り締め、今から晩御飯の算段を始めるナナセなのだった。
そんなナナセやヨツハの頭にちょいちょいっと、実に楽しそうにリボンを結んでいくのは、カレンその人だった。

「クィ達も、一緒に食べていいかな?」
おずおずと顔を出したクィとシェミアに、もちろんどうぞ、と、ヨツハは、そんな2人に優しく微笑んだ。
「クィちゃん、シェミアちゃん、こっちの席、空いてるよ」
先に来ていたチャイが2人を手招きする。もちろん、お母さんのアーネチカも一緒だ。
実は彼女、一皿ずつ平らげる程のくいしんぼう。積まれた皿はもう、何枚だろうか。
「ん~♪皆おいしくて選べない~」
と、皆に丸つけちゃったりして。

「お料理、いっぱいあるんだよう。どれから食べようか、クィ、迷っちゃうんだよう」
多種多彩な料理に、ついつい迷ってしまうクィ。
そんなクィにシェミアは、まずは自分の料理を勧めてみることにしたらしい。
「さ、これがわたしの香草入りペペロンチーノだよ……。クィ……食べてみる……?」
「シェミアさん特製のペペロンチーノ、クィも食べてみるね、ありがとう……♪」
嬉しそうに目を細めるクィ。
フォークにくるくる巻きつけて、ぱくっ……。
しばらくの間、沈黙が訪れた。
……ごっくん……。
「……どうかな……?」
涙目を隠せずに、クィは手の甲で涙を拭う。
「シェミアさん、あの……ペペロンチーノって、辛いんだね」
でも、おいしいよ、とにっこり微笑みつつも、ミルクのコップを引き寄せるクィなのだった。

めいめい、好きな料理を盛っては食べていく。好みはそれぞれあるようで……。
「おお~新しい味ですね。これは美味しい」
と、チャイの【冷製デザートパスタ】をパクつくのは、甘いものには目がないサザ。他の料理はそこそこに、すっかりデザートパスタにご満悦。

(「こっちも食べてみようかな」)
気まぐれに取った皿の端のネームプレートには『ヴァゼル』の文字。
(「見た目は普通のパスタ……だよね、これ……。でも、あのヴァゼルさんだし……。え~と……突っ込むべきか……でもただのどじっこかもしれないし……」)
そしてサザは、無難に笑ってスルーした。

次に取った皿の端のネームプレートには『クィ』の文字。
「……!美味しい~。クィちゃん料理上手ですね。きっといいお嫁さんになりますよ~」
照れるクィに思わず。
「じゃあ、うちに来てもらおうかな……?」
言ってしまったのは不覚だったかもしれない。サザは、たちまちの内にアーネチカとレベッカに腕を取られてしまった。
「あなたにはお仕置きが必要なようだね……?」
不敵に微笑むシェミアに抗う術を見出せず……。
「あふ~」
辛さで吹き飛ばしを受けてどこかに飛んで行ってしまった。

もうすぐ結果発表の時間だ。チャイは、半ばあきらめかけていた。
「まぁ、これくらいだよね~」
ひとり、ぽつり呟く。
「そんなことないわよ。あなたも沢山頑張った。そうでしょう?」
振り返ると母親のアーネチカが優しく微笑み掛けていた。
「あなたは私の、自慢の息子なのよ?きっとうまくいくわ。だから、元気出しなさいね♪」
ぽんぽんっと頭を撫でてくれる、その手の温かさが、チャイは無性に嬉しかった。

(「美味しく幸せな一日に感謝っすよ♪」)
今日一日、美味しいパスタと楽しい時間を皆と満喫したナナセは、大会が終わった後も、暫くはお料理談義に花を咲かせたりしていた。

カレンは、町の人になにやらプレゼント。果たして、その中身は……!
「私たちの旅団の名物なんですよ♪ここでもひろめてあげてください♪」
どうやら箱の中身は全部どじっこシールのようだ。うふっとウインクしたカレンの魅力に虜にされた男性が力強く頷いたとか。

結果は、チャイとクィの同率優勝。ふたりには、表彰状が授与された。
その時のチャイの驚きようは、後日、母親のアーネチカがたっぷりと語ってくれるだろう。

-おしまい-

0 件のコメント:

コメントを投稿