2014年11月11日火曜日

TW3 【ミニ偽シナリオ】 ポイズンヴァイパーをやっつけろ! OP&リプレイ

ばたんっ!

大きな音が鳴るのも構わず、息せき切って少女が部屋の中へ駆け込んできた。

「ポイズンヴァイパーが出たの!
1匹は見かけたんだけど…もしかしたら、まだ他にもいるかもしれないし…」

今はまだ卵だけの被害ですんでいるけれど、卵、次々と飲み込まれていた様子から察するに、卵がなくなったらきっとその親…鶏ごと食べてしまいそうな勢いなのだと少女は告げた。

「それでね…ポイズンヴァイパーを退治するのを、手伝ってほしいの」
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<参加者>
◆猛る烈風・アヤセ(c01136)
◆天華の欠片・キリィ(c01934)
◆世界樹の妖精術士・シル(c25139)
◆兄想い・エリナ(c26549)
◆夜陰に咲く六花・ルーシア(c27132)
◆ほとりの・クィ(c03420)NPC
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やっぱりリプレイを外部に出すのは恥ずかしい~って方は、クィまでお手紙頂けるとありがたいです。
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「こっち、こっちなんだよう!」
 先ほど辿った跡を再び急ぐのは、ほとりの・クィ(c03420)だ。
「しかし、村の中にいつの間にこんなおっきなへびさん達が入ってきたんだろ?」
 共に駆けながらも、疑問を口にするのは世界樹の妖精術士・シル(c25139)。それもそのはず、季節は今や、冬の真っ只中だというのに……。
(「冬眠し損なったんでしょうか、このポイズンヴァイパーたち?」)
 何にせよ、誰かが襲われたら危ない事に変りは無いのだから、と密かに闘志も燃やすのは夜陰に咲く六花・ルーシア(c27132)である。
「ポイズンヴァイパーが群れで出ましたか……」
 拳をぐっと握り締め、ぽつりと呟くのは猛る烈風・アヤセ(c01136)。
(「あれは単体でも危険なもの。それが複数で、一般人を襲う危険がある……」)
「ならば、残らず退治してしまいましょう。罪無き人々を理不尽な暴力で不幸にするのは、許せません」
「ここはひとつ、村の平和の為にがんばりますかっ!」
 シルも同意と頷いてみせる。

 歩く度にその足元で煌くのは、雪の結晶を模したアンクレット。その動きがはた、と止まると天華の欠片・キリィ(c01934)の閃く絹糸のような銀髪がはらりと収まる。
「まだ卵で済んでいるからいいが……人に被害が及ぶ前に排除、だな……。ここか……」
「皆様、本日はよろしくお願いいたしますね」
 目に鮮やかな桃色が全身を覆う魔導装甲で駆け、息も上がらないのは兄想い・エリナ(c26549)だ。
「非マスカレイドとはいえ、このサイズの蛇は村には脅威ですわね。さくっと燃やしましょうか」
 柔らかな声色とは裏腹に、彼女が鞘から刀身を抜き放つと、緋色の魔法の炎が瞬時に纏われる。
 今度は一人じゃない、そう、グリッター村のとある一軒家に出入している仲間も一緒なのだ。


 そこには三メートルはあろうかというポイズンヴァイパーが四体、鶏の卵を抱えてとぐろを巻いていた。
「これは子供とか人が丸飲みされてもおかしくないから、止め刺しておく方が無難かな。村の中だし……」
 敵と見定め、すっ、とその魅惑的な瞳を細めるキリィ。
「え、このサイズだとわたしも丸呑みされちゃうの!?」
 見上げて驚いているシルに、ポイズンヴァイパーはキシャーと威嚇する。アヤセが後ろ手に庇いつつ、素早く陣形を整えていく。
「私は元より、人を飲み込んじゃうような蛇は退治です!!」
 その腕に蛇革バッグが下げられていたからだと彼女は気付いていただろうか。
「……色々大変な時に……出てくるならもっと空気を読んでっ」
 チョコ作りの途中でとりもあえず出てきたので、実は未だエプロン姿のルーシア。そのエプロンから漂う甘い匂いに、新たな餌だと認識したポイズンヴァイパー達もずるりずるりと動き出す。

 機先を制したのはアヤセだった。
「私の拳が光って唸る……です!!喰らいなさい!!」
 烈光の掌よ、もっと輝け!とばかりに、普段は漆黒のアヤセのバトルガントレットが輝く光を帯びて、ポイズンヴァイパーを掴み掛かる。
 ルーシアが自身の心を媒介にして創造した白銀の鎖は、巨躯に絡みついて放さない。
 クィが招いた追い風に乗ったエリナが豪奢で複雑な「炎の華」を描く斬撃を放つ。抜刀した衝撃で広がった炎から逃げられずに焼ききられた一体が力無く横たわった。
「まあ、この程度でダウンされるなんてひ弱ですわ」
 冑の中で小気味好いとほくそえむエリナ、そして思い出したようにクスリと哂う。
「蛇の肉って焼いたら食べられるのでしたっけ?」
 身の危険を感じたのか、お返しとばかりに牙をむくヴァイパーに肉薄したのはキリィだ。幻の純白の薔薇が舞う中、舞踏の様な華麗なステップで惑わす間に三つ四つ、と出来た隙にアイスレイピアを滑らせていく。
 白のロングドレスの際どいスリットが閃き、ちらりと覗く脚線美に、その意識は朦朧としたようだ。
「残念だが……こうするしかないのでね……」

「ニルちゃん、撃ち抜くよ!」
 小さな相棒に呼び掛けるのはシルだ。彼女は大きな翼の装飾がある白銀製の長杖を右手で軽々と持つと、左手をピストルの形にして妖精の矢を放つ。
 風に煽られていたところに胴を撃ち抜かれたポイズンヴァイパーは、大きく口を開けて喰らいつこうとするも、風の勢いにままならずその牙は空を切る。

 アヤセに握り締められていたヴァイパーがずるりと身を捩ると、その腕を噛みちぎろうと大口を開ける、と肩口から血が滴って彼女の純白な戦衣に赤い染みを広げていく。
 アヤセは一旦身を引くと、その掌の輝きを握り締めて、幾千という「竜」を帯びた拳と蹴りを連打していく。
「猛ろ烈風!!爆ぜろ竜!!ボコボコになっちゃいなさい……なのです」
「加勢しますね」
 再び白銀の鎖を創造したルーシア。包み込むように配したつもりだったが、どこに隙があったのだろうか。大蛇はあざ笑うようにするりと抜け出てしまう。

「クィの風に乗ってみるかな?」
 つむじ風を別の一体に向けると、少女は追い風も招いて見せた。
「キリィ様、お手伝いいたします。来なさい、星霊フェニックスよ」
 エリナが燃え盛る剣を天に仰ぐと一叢の炎がさざめき立ち、鳥の形を模っていく。
 キリィの周りを旋回すると、炎で出来た不死鳥の羽が幾枚かはらりと舞い降りた。炎の羽と純白の花弁が舞い散る中、華麗なステップを刻むその姿は雪の精のようで……。
「きれいなんだよう」
 妹でさえも、ほうと思わず目を見とれさせてしまう彼女が浮かべるのは涼しげな笑み。
「……共存って難しいのよね……。……また会いましょう、あの世でね」
 形のよい唇が言葉を紡ぎ細剣で薙ぎ払うと、クィがその胴を三つに斬り裂いていた。

「逃げるなー!ニルちゃん、ターゲットロックオン!」
 胴を撃ち抜かれた大蛇に、再びアヤセのサウザンドアーツが炸裂する。
「もう逃がしませんよっ」
 放たれた鎖は、幾重にも絡められていったのだった。


「アヤセさんっ!」
「ひどい怪我……いま治癒を。ニルちゃん、癒しの妖精環を描いて……」
 慌てて駆け寄るクィ。シルは祈るとフェアリー達がアヤセを取り囲んで祝福を与えていく。

「キリィさんもじっとしていてくださいね。月よ、癒しの光を……」
 だが構えていたのは泡立て器だった。
「ルーシア?」
「……すみません、間違えましたっ」
 では改めて、とすらりとムーンブレイドを抜いて天に掲げるルーシア。その透き通る翠淡色の刀身から淡い光が立ち上り、空に癒しをもたらす小さな月が現出する。
 真昼の月。聖月の光を浴びながら、まるでその麒麟の霊気を頂いているかのようだ、とキリィは想う。
「助かったよ、ありがとうな、ルーシア」
 ぽんと頭に手を置くと、もう大丈夫、とキリィは優雅に微笑んでみせた。

「蛇はどこから来たのでしょう?」
 それにしても、と切り出すのはエリナだ。鶏の卵を次口と飲み込んでしまう猛毒をもった巨大な蛇が四体も、それもこんな村の近くに。
「もしかしたら、近くに巣があるのかも…?」
「成る程ですわ。蛇の巣の高々一つや二つ、まして三つや四つ、わたくしの手に掛かれば、なんてことありませんわ!」
 意気揚々と蛇の巣を探索に出掛けたエリナ。彼女が如何にして見つけ出し、焼き払ったか、それは後々彼女の口から語られる事だろう。

「へびさん、迷い込んだだけかもしれないし、このままだとかわいそうだし、村の人たちもびっくりするだろうから、ちゃんと埋葬してあげるよ」
「そうだな、……あの樹の陰なんてどうだろうか?」
「そうですね、あそこなら人目につかなさそうですね」
 程なく埋葬を終えると、三人は祈りを捧げた。

 集められたのであろう無事に残った幾つかの卵に、親なのだろうか、鶏がコッコッコッコッと集まってきていた。
「あ、鶏さんなんだよう」
「ちゃんと避難していたんですね、無事でよかったわ」
 微笑み合った二人の肩に鶏冠の小さな鶏が乗りかかり、お礼のつもりなのか鶏冠をこすりつけてくる。
「ぁ……くすぐったいんだよう♪」
 周囲を取り囲まれ鶏まみれになるクィを微笑ましく見つめていたルーシアは、ヴァイパーが壊してしまった鶏小屋に目を遣る。脆くなっていたのだろうか、力づくで開けられた壁の穴は幸いそんなに大きなものではなく、ルーシアはほっと一息。
(「後でリペアマスターで修理しておきましょう」)

「さあ、改めてチョコを作りましょうかっ」
「おー☆」
 気合十分、遅れた分を取り戻すべく、近づきつつある決戦の日に向けての決意を新たにするルーシアなのだった。

 最後に、戻ってきた三人も、漏れなく鶏まみれになったことも記しておこう。
(Fine)

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